高齢になると、食が細くなったり、買い物や調理が負担になったりして、「食事の形」が少しずつ変わっていきます。放っておくと体重減少や筋力低下につながりやすい一方で、無理なく整える方法もたくさんあります。
この記事では、介護福祉士であり調理師免許を持つ筆者が、高齢者の食事の実態データをふまえながら、フレイル予防の考え方、続けやすい献立のコツ、そして「作れない日」の味方になる宅配弁当(仙台の実例)まで、やさしく整理します。
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、治療・診断や効果の保証をするものではありません。持病などで食事制限がある場合は、主治医・管理栄養士等にご相談ください。
高齢者の食事、いま何が起きている?(実態データ)
まずは現状を知ることが、ムリのない対策の第一歩です。ここでは「低栄養」「ひとり暮らし」「食べにくさ」といった、食事が崩れやすい背景をデータと一緒に見ていきます。
(ここから、具体的にどんな“困りごと”が増えやすいのかを、順番に確認していきます。)
低栄養傾向は“めずらしくない”
65歳以上の高齢者の低栄養傾向の者(BMI≦20 kg/m²)の割合は、男性12.2%、女性22.4%。
出典:厚生労働省「令和5年 国民健康・栄養調査結果の概要」
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001338334.pdf
上の通り、特に女性では「5人に1人程度」が低栄養傾向に当てはまる可能性が示されています。年齢が上がるほど割合が高くなる点も、同資料で触れられています。
BMIって何?(補足)
BMIは、体格の目安としてよく使われる数値で、計算式は BMI=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m) です。
たとえば「身長1.55m・体重48kg」の場合、48÷1.55÷1.55=約20.0となります。
高齢者では、フレイル予防と生活習慣病予防の両方に配慮しつつ、当面目標とするBMIの範囲を21.5~24.9とする考え方も紹介されています。
参考:厚生労働省 e-ヘルスネット「高齢者の低栄養予防」
https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/food/e-02-014.html
※BMIはあくまで“参考の指標”です。体格・筋肉量・体調によって見方が変わるため、「最近やせた」「食事量が落ちた」などの変化も合わせて見ていくのが大切です。
「ひとり暮らし・夫婦のみ」が増え、食事が簡素になりやすい
高齢者世帯の世帯構造をみると、「単独世帯」が903万1千世帯(高齢者世帯の52.5%)、「夫婦のみの世帯」が749万8千世帯(同43.6%)。
出典:厚生労働省「2024(令和6)年 国民生活基礎調査の概況」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa24/dl/10.pdf
家で一人だと「作るのが面倒」「食べる気が起きない」「同じ物ばかり」になりやすく、栄養の偏りが起こりやすくなります。
“孤食”が食事バランスに影響することも
孤食が週2日以上の人は、主食・主菜・副菜を3つそろえて食べることが「ほぼ毎日」の割合が42.4%。孤食がほとんどない人は62.3%。
出典:農林水産省「平成29年度 食育白書」関連資料(孤食の状況)
「誰かと食べる日」があるだけで、食事の形が整いやすくなることがあります。無理のない範囲で、週に1回だけでも“誰かと食べる機会”を作るのは良い工夫です。
フレイル予防に向く食事の“基本”5つ
ここからは「何をどれくらい意識すると整いやすいか」を、難しい計算なしでまとめます。ポイントは“完璧”ではなく、“続く形”を作ることです。
(まずは一番効果が出やすい“土台”から、順に押さえていきましょう。)
1)たんぱく質は「毎食」少しずつ(主菜を置く)
高齢者が1日に必要なたんぱく質量の目安として、1.0~1.2g×体重(kg)が推奨されています。
出典:東京都福祉局「『食べる』フレイル予防」
https://www.fukushi1.metro.tokyo.lg.jp/kaigo_frailty_yobo/yobou/point_eiyo/02.html
たとえば体重50kgなら、目安は50~60g/日です。大事なのは「1日まとめて」ではなく、毎食に分けること。
- 朝:卵・納豆・ヨーグルト
- 昼:魚・鶏肉・豆腐
- 夜:肉・魚・卵+大豆製品
「主菜がない日が続く」と、筋肉を作る材料が不足しやすくなります。
2)エネルギー不足を防ぐ(“食が細い”人ほど重要)
高齢期は「太りすぎ」だけでなく「やせすぎ」も課題になります。食事量が落ちている人は、まずは食べられる量でエネルギーを確保するのが優先です。
筆者の80代半ばの母も食が細く、嗜好の面で(好き嫌い)栄養が偏りがちで「やせすぎ」に当たります。実家で一緒に片付けなどを行うと“疲れ”が年齢以外の原因と感じることが少なくありません。
やはり“エネルギー不足”です。
例:ごはん量が少ない日は、間食(牛乳・チーズ・プリン・おにぎり半分)を“食事の一部”として足すと続きやすいです。
3)野菜・海藻・きのこは「小鉢」で増やす
噛むのが大変な方でも、やわらかく煮る・とろみをつける・刻むなどで食べやすくできます。
- 具だくさん味噌汁
- やわらかい煮物
- 茶碗蒸しに野菜を入れる
「サラダが無理なら、汁物・煮物でOK」です。
4)水分は“こまめに”がコツ(汁物・お茶も活用)
高齢者は喉の渇きを感じにくくなることがあります。
- 汁物
- お茶(カフェイン控えめでもOK)
- 牛乳やスープ
などで“自然に”水分が入る形にすると負担が少ないです。
5)“食べやすさ”は栄養と同じくらい大事(形・温度・味)
食べにくさがあると、栄養が良くても続きません。
- 肉→ひき肉・鶏そぼろ・やわらか煮
- 野菜→煮る・蒸す・とろみ
- 口当たり→温かい汁物、少し濃いめのだし
「食べられる形に直す」だけで、食事量が戻ることもあります。気になる場合は、歯科受診や専門職への相談も視野に入れてください。
作るのが面倒な日は「宅配弁当」も視野に(仙台の実例)

毎日きちんと作るのが理想でも、現実には疲れる日があります。そんな時に“外注=手抜き”ではなく、“継続のための選択肢”として宅配弁当を知っておくと安心です。
(仙台市の公的サービスを、まずは“知っておく選択肢”として紹介します。)
仙台市の公的サービス:食の自立支援サービス(安否確認つき)
高齢者のお宅へ昼食または夕食をお届けするとともに、安否を確認します。費用(利用者負担額):1食あたり544円(税込)。
出典:仙台市「食の自立支援サービス」
https://www.city.sendai.jp/hokatsushien/kurashi/kenkotofukushi/korenokata/hitorigurashi/jiritsushien.html
対象や手続きは状態確認が必要なので、区役所窓口や地域包括支援センター、担当ケアマネジャーに相談するとスムーズです。
民間の宅配弁当(仙台対応の例)
民間サービスは、食べやすさ対応(きざみ・おかゆ等)や、コースの幅があるのがメリットです。価格はエリアや内容で変わるため、最新は各社で確認してください。
- 「おかずのみ」「ごはん付き」で選べる
- 配達頻度(毎日/週数回)を調整できる
- 普通食以外のコースが用意されている場合もある
※特定の疾病に合わせた食事が必要な場合は、自己判断せず専門職へご相談ください。
宅配弁当を選ぶときのチェックリスト
宅配は便利ですが、合う・合わないが出やすい分、最初の見極めが大事です。ここでは“失敗しにくい見方”をまとめます。
(「続くかどうか」は、味よりも“生活に合うか”で決まることが多いです。)
量が合うか(食が細い人ほど「多すぎ問題」)
「残すのが続く→頼まなくなる」がよくあります。小さめ・おかずのみなど、完食できる量から始めるのがおすすめです。
食べやすさ対応があるか(きざみ・おかゆ等)
食が細い方ほど「1食が多い=食べきれない」が起きやすいです。残すことが続くと、本人は罪悪感が出たり、家族は「もったいない」と感じたりして、結果的に「もう頼まなくていいか…」となりがちです。最初は小さめ量、または「おかずのみ」から始めて、完食できる成功体験を作るのがおすすめです。
チェック例:主食の量調整ができるか/小盛りやミニサイズがあるか/1回だけのお試し注文ができるか/「週○回」など無理のない頻度にできるか。
食べやすさ対応があるか(きざみ・おかゆ等):噛みにくい、飲み込みに不安がある方は、食形態が合わないだけで食事が苦痛になりやすいです。対応の有無だけでなく「どこまで調整できるか」を確認すると安心です。
チェック例:きざみ・極きざみの選択/おかゆへの変更/やわらか食の用意/汁物の有無/硬い食材(根菜・肉)の扱い。
※嚥下に不安が強い場合は、自己判断で形態変更をせず、専門職に相談しながら進めてください。
配達方法(手渡し/置き配)と安否確認
配達は「受け取れるかどうか」で継続率が変わります。手渡しが基本のサービスもあれば、置き配に対応するところもあります。家族が不在の時間帯が多い場合は、受け取り方法と連絡手段(電話・インターホンなど)も含めて確認しましょう。
また、手渡し+声かけがあるサービスだと、日々の“ちょっとした見守り”につながることがあります。生活リズムに合う形を最優先にしつつ、必要に応じて見守り要素も比較すると安心です。
チェック例:配達時間帯の目安/不在時のルール/連絡方法/家族への連絡対応の有無。
料金の見方(1食単価+配達料+支払い方法)
宅配弁当は「表示価格=総額」とは限りません。見落としが多いのは、配達料の有無、最低注文数、コース契約条件、支払い方法の違いです。「1食単価」だけで比べず、“月にいくらかかるか”まで計算すると失敗しにくいです。
チェック例:配達料・手数料/ごはん付き・おかずのみでの価格差/週○回以上などの条件/キャンセル締切(前日何時まで)/支払い方法(現金・口座振替・カード・月末まとめ等)/休止・再開の手続きのしやすさ。
しんどい日でも食事を続ける“現実的な工夫”
最後に、現場でもよく効く「続ける仕組み」を紹介します。がんばりすぎない工夫が、結果的に体を守ります。
(ここは“コツ”の章なので、今日からすぐ使える形に落とし込みます。)
冷凍・レトルトを“悪者にしない”
冷凍うどん、冷凍野菜、サバ缶、豆腐、レトルト粥。
これらを使って「温めて整う」日を作るだけでも、欠食が減ります。
“セット化”で迷いを減らす(例:朝の型を決める)
朝は迷いやすいので、
- ごはん+味噌汁+卵(または納豆)
- 食パン+牛乳(またはヨーグルト)+バナナ
のように「型」を作ると続きます。飽きたら、主菜だけ入れ替えると楽です。
週に数回だけ「宅配+一品足し」にする
宅配弁当の日は、
- 具だくさん味噌汁
- ヨーグルト
- 果物
のどれか1つを足すだけでも、整いやすくなります。**“100点”より“80点を続ける”**が勝ちです。
まとめ
高齢者の食事は、「栄養の理想」を追いかけすぎると続きません。大事なのは、低栄養を防ぎつつ、食べられる形で、無理なく続けることです。
- 低栄養傾向(BMI≦20)は高齢者で一定割合みられます(国の調査)
- BMIは体格の目安で、高齢者では目標BMI範囲(21.5~24.9)という考え方も紹介されています
- たんぱく質は「1.0~1.2g×体重(kg)/日」が目安として示されています
- 仙台市には、配食と安否確認を組み合わせた「食の自立支援サービス(1食544円)」があります
無理をせずに「タンパク質が摂れる一品」などを追加することから始めてみましょう。
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、医療・介護の助言や個別の栄養指導を行うものではありません。体調や持病、嚥下状態、服薬状況により適切な食事は異なります。心配がある場合は、主治医・管理栄養士等へご相談ください。


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